脱法?危険?安易な使用は厳禁です!

7月22日、警察庁と厚生労働省は、これまで「脱法ドラッグ」と呼ばれていた薬物について、「危険ドラッグ」という呼称を用いると発表しました。「脱法ドラッグ」という名称は、実際の危険性を誤解させるおそれがある、というのが名称変更の理由のようです。

近時、いわゆる脱法ハーブなどを使用して精神状態に異常を来して惹き起こされた交通事故が発生するなど、ショッキングなニュース映像なども相まって、社会的な問題として注目を集めてきています。インターネットなどで安易に手に入ることから、つい安全なものであると思ってしまう人も多いかもしれませんが、その危険性についても広く知られるところとなったように思います。

「脱法ドラッグ」と呼ばれてきたものの中には、実際には薬事法上の「指定薬物」を含んだものも多数あり、それらは「違法」なものなのです。以前は、薬事法による規制は流通の制限というレベルにとどまっていましたが、本年4月1日より、指定薬物の使用や所持も罰則が定められました。7月16日に前神奈川県議の男性が逮捕されましたが、所持していた脱法ハーブに指定薬物が含まれていたという、薬事法違反容疑でした。

また、昨年5月に愛知県で発生した交通事故の運転手が使用していた脱法ハーブには、「5F‐QUPIC」という物質が含まれていたのですが、この物質は大麻の40倍の効果があるとも言われています。(なお、この「5F‐QUPIC」は、昨年10月に「指定薬物」となり、さらに本年7月2日付で「麻薬」に格上げ指定されています。)この事故の当時は、違法薬物ということが出来ない物質でしたが、後の規制を見ても、極めて危険性の高い薬物であることは明らかです。

危険ドラッグを使用した事件としては、交通事故が多く見られます。それらには、いわゆる一般の交通事故(自動車運転過失致死傷罪)よりも重いものとして、危険運転致死傷罪として起訴される事案も見受けられます。しかし、危険運転の罪を問うためには、故意犯として、被告人に“薬物の影響により正常な運転が困難な状態にあるという認識ないしはその基礎となる事実の認識”がなければいけません。これまで同様の事件の多くでも、被告人側は、ドラッグやハーブによって正常な運転が困難になるとは思わなかったとして故意を否定することがあり、危険運転として処罰できるかは議論がなされてきました。

そうした中、本年5月20日に施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転死傷処罰法)」では、刑法に規定されていた自動車の運転についての罪を取り込んだ上、新たに危険運転となる場合を追加・新設し、処罰範囲の拡大が図られました。同法においては、①アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転、②幻覚や発作を伴う病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転、という現実に正常な運転が出来なかったどうかではなく、その「おそれ」があれば処罰するという類型を新設し、危険ドラッグによる交通事故事案に対する適切な処罰を目指しています。

現在、重大事案の増加という背景を受けて、行政や立法レベルでも危険ドラッグへの対応が進んでいます。しかし、薬事法の指定や立法の整備には一定の時間が必要とされることから、その対応も後手に回らざるを得ません。たとえ「合法」「安全」といった表示がなされていても、その内容は買い手にはわかりません。実際には、指定薬物であったり、強度の精神作用を及ぼすものであったりすることも、決して否定できないのです。

インターネット上では、明示的に「脱法ハーブ」「合法ハーブ」のような宣伝がされている場合もありますが、“人体吸引目的では販売していない”“吸引はしないで下さい”などと記載された上で、リラクゼーションや気分高揚効果のある商品として販売されていることが多いように思われます。また、一部の地域では、自動販売機による販売も未だに存在しており、その場合には、十分な説明もなくタバコのような外観で販売がされていることも多々あります。そうした状況では、一見すると、一般的な「ハーブ」、「お香」や「アロマ」といったものと同じような感覚で購入してしまう可能性も否定できません。商品の名称を問わず、十分な説明がなかったり、危険成分が含まれている疑いが持たれたりするようなものには、安易に手を出さないよう注意することが肝心です。(上杉謙二郎)