独禁法の改正―課徴金制度の見直し 

不当な取引制限を行った企業への課徴金制度を見直すことを柱とする独占禁止法の改正案が、今国会に政府案として提出されることとなりました。改正点の骨子を見てみます。

 

1 課徴金制度は、談合やカルテルなどを取り締まる目的で、違反行為を公正取引委員会に自主申告すると、課徴金が減額される制度ですが、企業からの調査協力を引き出して効率的に実態解明を進めるために、現在は自主申告した順番だけで一律に減免率を決めていました。現在は、申告順位1位は全額免除、2位は50%、3位~5位は30%と固定化されています。減免率に事業者の実態解明への協力度合いは反映されないようになっています。

改正案では、調査開始前の申告順位1位は全額免除、2位は20%、3位~5位は10%、6位以下は5%の申告順位に応じた減免率に加えて、協力度合いに応じた減免率を加算することとして、最大40%の減額幅が加算されることになります。

 

2 罰則が強化され、課徴金の算定期間を現行の最大3年から調査開始日の10年前まで遡れるように拡大されます(除斥期間は現行5年を7年に延長)。

加えて、資料が散逸しているなどにより一部の売上額が不明な場合の課徴金の算定基礎(売上額等)の推計規定が整備されることも盛り込まれます。

 

課徴金の額=(算定基礎となる対象商品や役務の売上額)×算定率(基本10%)-(課徴金減免制度による減免額)

ですが、算定基礎には、違反行為により不当利得が生じているものを対象に、例えば、

・談合金(対象商品や役務を供給しないことの見返りとして受けた経済的利得)

・下請け受注など密接に関連する業務によって生じた売上額

・違反事業者からの指示や情報を受けた完全子会社等一定のグループ企業の売上額

も追加される見込みです。

 

算定期間の延長は、談合などの不当な取引制限だけでなく、最近話題のプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業による不公正な取引に対する「優越的地位の乱用」にも適用する方針を固めているといわれています。

 

3 ガイドラインの整備

課徴金減免制度を活用するための協議の流れですが、

減免申請をすると→協議が開始され→協議内容の提示と減算率の提示がなされ→協議終了→証拠の提出→減算率を適用した課徴金納付命令

ということになりますが、協力内容の評価方法に係るガイドラインが整備される予定です。

 

4 秘匿特権

課徴金減免申請者の従業員等は、供述聴取終了後その場でメモを作成することができると、平成27年12月に審査手続きに関する指針で認められているところですが、調査にあたって、弁護士の相談時のメモなどを秘密にすることは認められていませんでした。

今回の改正で、わずかながら前進が見られ、いわゆる弁護士と依頼者間の秘匿特権への対応が独禁法の一場面に限って認められることになります。

調査を受けた事業者・企業(依頼者)が外部の弁護士に相談し法的意見等を得るなどの秘密を実質的に保護し、適正手続きを確保する観点から、不当な取引制限の行政手続きを対象として、独占禁止法76条に基づく規則、指針等を整備することも盛り込まれます。

事業者と弁護士との間で秘密の行われた通信の内容を記載した文書で、以下の要件を満たすことが確認されたものは、審査官がアクセスすることなく、速やかに事業者に還付されることが制度として、認められることになります。その要件とは、

①提出命令時に、事業者が不当な取引制限の行政調査手続制度の取り扱いを求めること

②適切な保管がされていること

③提出命令後、一定期限内に、文書ごとに、作成日時、作成者・共有者の氏名、物件の属性、概要等を記載した文書(ログ)を提出すること

④対象外の資料が含まれている場合には、その内容を報告すること

 

なお、弁護士ヘの相談前から存在する資料(一次資料)、相談の基礎となる事実を収集し取りまとめた資料(事実調査資料)等はこの制度の対象外です。

実態解明や事件処理が効率的になされるとともに、今回のこうした改正で、少しでも弁護士に相談しやすくなることが期待されます。

<池田桂子>