フィンテックの活発化に伴う法整備について

フィンテック(FinTech)とは、Financial(金融)とTechnology(技術)を融合させた造語であり、「IT技術を用いた金融商品・金融サービスの広がり」という意味合いで用いられています。フィンテックの一例を挙げると、ネットバンキングや仮想通貨(ビットコインなど)、電子決済などが挙げられます。

IT技術を用いることで、従来の金融サービスには必要不可欠であった大量の支店やATMネットワークなどが不要となり、より柔軟な金融サービスの提供が可能となるため、近年ビジネスチャンスが拡大していると言われています。その反面、従来の法規制では十分でない点も多く、わが国ではフィンテック関連の法整備が進められています。

以下、その一例についてご紹介いたします。

 

仮想通貨の取引における法規制・法整備

仮想通貨とは、おもにインターネット上で「お金」のようにやりとりされる、特定の国家による価値の保証のない通貨をいいます。仮想通貨は電子データとしてのみ存在しており、「ブロックチェーン」(ネット上の複数コンピュータで記録を共有・相互監視するシステム)によって管理されています。また、仮想通貨の価値は使用者の信用のみに支えられているので、通貨価値が変動するのが特徴です。

仮想通貨を用いることで、インターネット上での簡易迅速な海外送金や、資金決済等が実現できます。また、交換所を通すことで法定通貨(円や米ドルなど)との交換を行うこともできます(いわゆる仮想通貨売買)。

一方、仮想通貨の問題点としては、上述したとおり仮想通貨自体の価値が変動するため、投資の対象となるとともに、最悪“ゼロ”にもなりうるという点があります。さらに、取引の匿名性が強く、マネーロンダリングなどの犯罪の温床にもなりかねません。

実際に平成26年には、短期仮想通貨売買のための交換所を経営していた管理会社が経営破綻するという事件が起き、損失は約400億円にものぼりました。

 

 

そこで利用者保護と犯罪防止の観点から、「資金決済に関する法律」(以下、資金決済法といいます。)資金決済法の平成29年改正によって仮想通貨取引に対する法規制を盛り込みました。具体的には、以下の通りです。

 

・「仮想通貨」(資金決済法2条5項)の新設

仮想通貨について定義規定を設け、規制対象とすることを明示しました。

具体的には、「仮想通貨」を

①「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ」、かつ「不特定の者を相手方として購入および売却を行うことができる」類型(1号仮想通貨)

②「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる」類型(2号仮想通貨)

に分け、定義を設定しました。ビットコインは1号仮想通貨にあたります。

 

・「仮想通貨交換業」(同法2条7項)の新設と、仮想通貨交換業の登録制(同法63条の2)

仮想通貨交換業を営む会社については、利用者保護の観点から登録制を設け、種々の監督規定(同法63条の13以下)によって監督を行うこととしました。

「仮想通貨交換業」とは、①「仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換」、②①の「媒介、取次ぎ又は代理」、③①に際して「利用者の金銭又は仮想通貨を管理すること」のいずれかを業として行うことを指します。

つまり、仮想通貨の売買・交換を実施・促進する行為をビジネスとして行う者は、仮想通貨交換業者に含まれます。しかし利用者保護の観点から、この登録のためにはいくつかの要件を満たす必要があり、参入が容易とはいえません。

(ⅰ)組織形態

仮想通貨交換業を営む者は、「外国仮想通貨交換業者」(外国で交換業を営む者)であって「国内における代表者」等がいる者、あるいは「株式会社」でなければなりません(同法63条の5第1項1号、2号)。

(ⅱ)財産的基礎

資本金の額が一千万円以上であり、かつ純資産額がマイナスでないこと(同法同条同行3号及び平成29年3月24日内閣府令第7号)が必要です。

(ⅲ)業務遂行体制の整備

仮想通貨交換業の業務を適正かつ確実に遂行できるための体制が整備されていることが必要です(同法同条同項4号)。業務を「適切かつ確実に遂行できる」といえるためには、後述する資金決済法上の義務のほか、個人情報保護法や犯罪収益移転防止法上の義務などを遵守する体制を作ることも含みます。

(ⅳ)その他の要件

そのほかにも、法令遵守体制の作成(5号)や、誤認の恐れのある商号等の使用禁止(6号)、不適格者の排除(7号、8号)、反公益的事業を行う法人の排除(9号)、不適格な取締役等の排除(10号)が求められます。

上記の要件を満たして仮想通貨交換業者は登録簿(同法63条の4)に登録されたとしても、登録取消しをされずに業務継続ができるかどうかが問題となります。

交換業の登録者には、情報の安全管理義務(63条の8)や利用者財産の分別保管義務(63条の11)、年度ごとの報告書作成義務(63条の14)などを課せられ、これらに反した場合には登録を取り消される(63条の17)こともあります。

 

・「特定事業者」(犯罪による収益の移転防止に関する法律2条2項)に「仮想通貨交換業者」を追加

マネーロンダリング防止の観点から、収益移転防止法上の規制を「仮想通貨交換業」の者にも及ぼすことになりました。

具体的には、「特定事業者」に、「仮想通貨交換業」(同法2条31号)を追加し、本人確認義務(収益移転防止法4条)や確認記録の作成・保存義務などを負わせることとしました。

今後は、上に紹介した仮想通貨交換業以外にもさまざまなビジネスモデルにおいて法整備が進んでいくと思われます。あるいはすでに進行しているとも予想されます。フィンテックを導入したビジネスを検討されている場合には、法改正の動向には特に注意しておくべきでしょう。                       (西脇健人)