「グレーゾーン解消制度」の活用 

何か新しい事業を行うとき、または新しいビジネスモデルを思いついたとき、既存の法令による規制にひっかかるのではないかと心配されることがあると思います。このような時に、「グレーゾーン解消制度」の利用をお勧めします。

 

従来これに行政として応ずるものとして、「法令適用事前確認手続(いわゆるノーアクションレター制度)」があります。回答内容の照会をした事業者も含めて公表することを基本とした制度であるため、利用することに抵抗感もあり、平成19年には照会書名を原則非公表とすることとされました。しかしながら、それでもそれほど利用されてこなかったようです(古い資料ですが、各府省庁合計で平成19年度は20件、平成20年度は17件の利用にとどまっています。)。グレーゾーン解消制度は、法令適用事前確認手続をさらに発展させた手続で、産業競争力強化法(2014.1.20施行)の中で認められている制度です。その趣旨や目的は、経産省のサイトによると、以下の通りです。

 

企業が、現行の規制の適用範囲が不明確な分野においても、安心して新分野進出等の取組を行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ、規制の適用の有無を確認できる制度を創設します。事業開始後における規制当局又は利害関係者とのトラブルリスクを未然に回避することを目指します。

 

この制度で公表されているものとしては、医療行為に関連したものが比較的多いようです。その中から2例あげてみます。

 

(1)フィットネスクラブを運営する企業から、医師の指導、助言を踏まえ、その職員が運動に関する指導を行う場合、それが医師のみに認められている「医行為」に該当するか否かについて照会がなされ、ストレッチやマシントレーニングの方法を教えること等の医学的判断や技術を伴わない範囲内の運動指導を行うことは、医行為に該当しないということが確認された例。

 

(2)血液検査サービスを行う企業から、利用者が自ら採血した血液について簡易な検査を行い、利用者に対し、検査結果を通知する場合、利用者が自ら採血することや、事業者が血液検査の結果を通知すること等が、それぞれ、医師のみに認められている「医業」に該当するか否かについて照会がなされ、利用者が自ら採血することは、「医業」に該当しないこと、また、検査結果の事実を通知することに加え、より詳しい検診を受けるよう勧めることも「医業」に該当しないこと等が確認された例。

 

法令適用事前確認手続の場合は、対象となる法令の条文は、許認可、行政処分等にかかる条文(規制)だけに限定されていたところ、グレーゾーン解消制度の場合、対象となる条文には、そのような制限がなく、範囲が広がりました。ただ、グレーゾーン解消制度においても、照会にあたっては、適用の有無を問題とする法令を特定しなければならず、新事業の活動全般について、全ての法令との関係で、その合法性を確認する制度ではないことに、注意が必要です。

 

また、照会の回答から、規制の対象となるという場合には、事業者の方で、安全性などを確保する措置を所管大臣に提案をして、特例措置を認めるよう申立をするということも出来ます。これを「企業実証特例制度」といいます。グレーゾーン解消制度と同じで、産業競争力強化法にその根拠をおいています。

 

この場合、事業所管大臣は、規制所管大臣との協議により、安全性等の確保を条件として、特例措置を整備し、事業者は整備された特例措置を含む事業計画を所管大臣に提出して、事業の認定を申請します。事業者は、認定後、この事業を開始し、その取組結果を踏まえ、安全性等で問題がなければ、この特例措置を全国的に展開していくということも予定されています。

 

この例として、アシスト力の大きなリアカー付電動アシスト自転車を配達事業に活用する計画を認定した例があります。

 

電動アシスト自転車は、現行の道交法施行規則上は、アシスト力の上限が2倍とされているところ、安全性の確保を条件に、3倍までのリアカー付電動アシスト自転車について、物流用途に限定して活用出来るよう特例措置を整備したものです。これにより、配送事業に携わる女性や高齢者の負担軽減による雇用機会の拡大、物流におけるCO2削減といった目的に寄与することが期待されます。

 

これらの2つの制度は、従前からある法令適用事業確認制度よりは、利用されているようです。新事業を行っていくうえで、規制との関係で疑問を持たれた場合には、活用されてはいかがでしょうか。(池田伸之)