事業承継や相続対策に役立つ家族信託をご存知ですか?

高齢化の進む中、財産管理や財産承継のために、信託を活用することが注目を集めています。信託とは、財産を持っている人が、自分が信頼できる人に財産を託して、自分の目的に沿って、その財産の管理や処分などの行為をさせ、その財産自体や財産から出た利益を、自分が指定した人に帰属させる仕組みのことです。委託者や受託者の死亡や後見開始、破産、差押え等に影響を受けることなく、受益者のために信託を継続することができます。また、財産を委託する委託者がかなり自由に信託の内容を定めることができるなどのメリットがあります。

 

信託の一つの形である跡継ぎ遺贈型受益連続信託では、信託がなされた日から30年を経過した時点以降に現に存する受益者が受益権を取得し、その後受益者が死亡するまで、または、受益権が消滅するまでの間はその効力が持続するとされます。

 

複数の財産や所有者が異なる財産、共有にかかる財産でも、一つの信託として管理処分等をすることができます。信託では、自ら受益者となる信託契約を結べば、自ら信託目的を定めて、受託者に信託財産を投機的に運用させたり、将来、子どもや孫に財産を贈与したりすることも可能です。信託財産は委託者の下を離れて、その管理処分権は受託者の下に移ります。事業承継に当たって、種類株式を利用して自社株を後継者に円滑に承継する手法はいろいろあります。

①株主としての発言権を維持しつつ後継者に株式を移転させたいときに、種類株式を利用して、拒否権付き株式(黄金株)を手許にとどめ、普通株式を後継者に譲渡する方法、

②無議決権株式を後継者に譲渡する方法、

③属人的株式を利用して後継者に株式を譲渡する方法等もあります。

但し、これらの利用に当たっては、定款変更の手続や、株主総会での加重された決議要件、既存株式の変更の場合は、全株主の同意が必要となる場合もあり、ハードルが高いです。

 

これに対して、信託は信託関係者間で行われるもので関係者以外の株主の了解を得る必要はありません。信託前に生じた委託者の債務を信託行為によって、信託財産責任負担債務とすることができますし、プラス・マイナスの財産の集合体である事業も、信託行為で定めれば、対象とすることができます。

 

いろいろなバリエーションが考えられますが、所有不動産を関連会社(受託者)に託し、不動産管理処分契約を結ぶ、第1順位の受益者は所有者であった親、第2順位の受益者は子どもとして、例えば所有不動産のマンションが老朽化した場合には売却できる権限や補修する権限を受託者に予定しておく方法が相続対策に役立つ方法の一つといえます。

 

遺言でも財産の承継はできるのですが、例えば、第1順位は長男に、第2順位は長男に子どもがいないことから、次男の子ども(孫)にすることを考えている場合、遺言はいつでも書き換えられるため、信託による方が、確実に信託者の意向を実現することができます。

 

信託する場合の注意点として、受益権を有する受益者に課税されるため、受託者に生ずる利益と受益者の負担する対価や費用を比較考慮して検討する必要があります。

 

なお、委託者の死亡または死亡後の事由を、始期や条件として信託から給付を受けることとなる受益者について定める遺言代用信託があります。この場合、遺言による場合のように検認の手続きや遺言執行等の手続きを経ることなく迅速に財産承継を図ることができます。また、強引な親族から遺言の作成を強要されているなどという場合には、何度でも撤回できる遺言ではなく、信託行為による別段の定めに限定のないことを利用して、死後受益者の変更や信託の変更、終了を禁止することを予め定めておくことができます。

 

信託銀行の扱う対象商品でなくとも、家族信託の利用は可能です。自分の財産の中で、目的に従って、一定の財産について管理処分を信託宣言によって公正証書等により、その他の部分と隔離してしまう方法もあります。従来の方法に加えて、信託の活用も考えてみてはいかがでしょうか。(池田桂子)