人事労務管理の諸問題 ~違法残業と刑事罰等~

平成29年7月12日に電通の労働基準法違反罪に関し,略式起訴が不相当とされ,正式裁判が行われることとなりました。略式起訴とは簡単にいうと100万円以下の罰金・科料に相当する事件の場合に,被疑者の同意があれば,罰金の支払いとともに即時に釈放されるという制度で,ドラマで観られるような法廷で裁判が行われるわけではありません。しかし,今回は過去の例からすれば罰金相当と考えられる事件について,略式起訴ではなく電通の社長が代表者として法廷に出頭する必要がある正式裁判が開かれることになりました。

 

これは,企業側への労働時間管理の徹底を求める裁判所の意思表示といえるかもしれません。今までは,36協定違反があった場合でも未払残業代の支払いを求められたり,労働基準監督署からの是正勧告を受けたりすることはあっても略式起訴される例は少なかったと思われます。

 

しかし,今回はその略式起訴を超えて,正式裁判を行うという判断が出されており,企業による安易な違法残業を許さないという姿勢が表れているものと考えられます。

 

ちなみに,労働基準法32条は,労働時間の上限を1日当たり8時間,1週間当たり40時間と定めています。この上限を超えて労働者に働いてもらうためには,労働基準法36条第1項に定められている労働者と企業との協定(36協定)を締結する必要があり,この協定がない場合の法定時間外労働はすべて違法となり,労基法上の罰則規定が適用されます(労働基準法119条)。

 

また,当たり前ですが36協定を締結して残業代を支払えばどれだけでも残業をさせられるというわけではありません。詳しくは厚生労働省が定めている時間外労働の限度に間する基準(平成10年労働省告示第154号)をご参照いただければと思いますが,例えば1か月45時間が限度とされています。

 

今まで,(違法)残業についてあまり重要視してこなかった企業も多いかと思いますが,このような裁判所の態度の変化などを踏まえるとより一層人事労務管理に対するコンプライアンスを重視することが求められると考えられます。(西脇健人)