新しい消費者契約規制のポイント~消費者契約法が一部改正されました~

1 昨年6月3日に、消費者契約法の一部を改正する法律が公布され、本年6月3日から施行されました。消費者契約法は、消費者と事業者の間の交渉力や情報格差等を背景に、消費者の利益を擁護するため、平成12年に成立した法律です。

しかし、その後の社会や経済の状況の変化(高齢化の進展に伴う高齢者の消費者被害の増加、情報通信技術の発達、民法(債権法)改正議論)に伴い、平成26年から法改正の必要性が議論されてきました。そうした議論の結果が、本改正における改正点になります。

 

2 今般の改正点としては、大きく①契約の取消し、②契約条項の無効等、の二つに関するものが中心となっています。

そして、①についてはⅰ)過量な内容の契約の取り消し(新たな取消事由)、ⅱ)不実告知取引における重要事項の範囲の拡大、ⅲ)取消権行使期間の延長、が、②についてはⅰ)事業者の債務不履行等の場合でも消費者の解除権を放棄させる条項を無効とする、ⅱ)法10条に例示を追加、というのが主たる内容となります。

本ブログにおいては、上記①の契約の取消しに関する改正点をご紹介したいと思います。

 

3    ⑴ 改正の背景にもあるように、判断能力の低下した高齢者を対象とする消費者被害が社会的にも問題となっており、その中でも、過量販売・次々販売という事案に対する規制として、新たな取消権が規定されました。

簡単にまとめると、契約の目的となるものの分量等が、当該消費者にとって通常の分量等を著しく超えるものであること(過量契約)、又は、既に当該消費者が契約済みの契約内容と新たに契約の目的となるものを合算した分量が、当該消費者にとって通常の分量等を著しく超えるものであること(次々契約)を事業者が知りながら勧誘した場合には、取消が可能となっています。

このような規定の仕方になっていることから、今後の実務上の運用としては、当該消費者にとって通常の分量等を著しく超えるものか、という過量性の判断が重要となってきます。基本的には、それぞれの消費者の生活状況等に応じて個別具体的に判断していくこととなりますが、既に過量販売規制をとり入れている特定商取引法についての運用状況は、参考になるものと思われます。

 

⑵ 改正前においては、不実告知取消の対象としての重要事項とは、契約の目的物の質、用途、内容ないしは、対価その他の取引条件、に限定されておりました。

しかし、このような契約の目的物そのものに関しない契約の動機(床下にシロアリがいるため、柱の状態が危険と言われて契約を締結したなど)について誤認をさせられ、契約を締結してしまった場合においても、なお消費者を保護する必要性が存在していると言うべきです。

そこで、改正法では「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために判断される事情」すなわち動機部分についても、重要事項として規定することとなりました。

なお、上記にいう重要な利益については、名誉・プライバシーの利益や電話を使用して通話をするという生活上の利益も含まれるものと考えられています。また、特定の個人にとって重要か否かではなく、一般的・平均的な消費者を基準に判断されるものであることには、注意が必要です。

 

⑶ さらに、これまで6か月であった取消権の行使期間について、1年間に伸長することも定められました。

これは、様々な事情の下、6か月以内の権利行使ができず、救済がなされなかった事案が多く存在していたことから、消費者の救済を広く実現するため、今回の改正がなされたものです。

 

4 今回ご紹介をした改正点は、消費者契約という一般の人々が関わる可能性の高い場面について、権利救済の幅を広げるものであると言えます。

ただし、これらの規定による救済が可能であることを知らなければ、結局は救済の機会を逃してしまいかねません。ご自身やご家族の締結した契約について、不安に思うことがあれば、まずはご相談いただければと思います。   (上杉謙二郎)