遺産分割での預貯金の扱い~最高裁判例が変わりました~【その2】

1 本年2月のブログでも紹介しましたが、昨年末、遺産分割に関して、重要な最高裁決定が出されました。(2月23日付ブログ:遺産分割での預貯金の扱い~最高裁判例が変わりました

 

この最高裁決定では、平成16年の最高裁判決によって示された、可分債権である預貯金債権は、相続開始時に当然に分割されて各相続人に帰属するため、遺産分割の対象とならないという従来の見解を変更し、普通預金、通常貯金及び定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続人に分割されることはなく、遺産分割の対象となると判断しました。

 

そして、本年4月に、上記最高裁決定に関連する最高裁判決(最高裁平成29年4月6日第一小法廷判決)が出されましたので、ご紹介します。

 

2 本件は、相続人らが、信用金庫を相手に、被相続人が死亡時に有していた、普通預金、定期預金及び定期積金の分割払い戻しを請求したという事案です。

 

これについて、まず、普通預金債権は、平成28年12月19日大法廷決定を引用して、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないと判断しました。

 

他方で、上記最高裁決定では判断されていなかった定期預金については、以下のように判示しました。

 

定期預金は、「預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し、預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり、契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。そして、定期預金の利率が普通預金のそれよりも高いことは公知の事実であるところ、上記の制限は、一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており、単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。」と性質を論じ、その上で、「他方、仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても、同債権には上記の制限がある以上、共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず、単独でこれを行使する余地はないのであるから、そのように解する意義は乏しい。」と指摘し、普通預金と同様、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはないものと結論付けました。

 

さらに、定期積金についても、「この理(定期預金についての理由付け(筆者注))は、積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。」と指摘し、やはり相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきであると結論付けました。

 

3 以上のとおり、本件最高裁判決は、平成28年12月19日決定において判断の対象とされていなかった「定期預金」「定期積金」についても、同最高裁決定と同様の立場に立つことを明示しました。

 

これによって、ひととおりの種類の預貯金債権について当然分割ではなく、遺産分割協議の対象となることが、最高裁によって確認されました。

 

4 先回のブログでも指摘をしましたが、今後、遺産分割協議を経ない状態での、預貯金の払戻し請求は、金融機関としても応じない対応となってきます。

 

今般、最高裁の判断が立て続けに出されたことにより、実務上・法律上の対応は議論が進んでくるでしょうが、不意に発生する相続の場面での現金の確保に備えて、生前の遺言作成による対応や、生命保険の受取人を特定の相続人とするなどの方法などを検討していくべきでしょう。             (上杉謙二郎)