ペットにまつわる法律問題~人生の伴侶としての存在~

近年、法律分野においても、ペットにまつわる問題は大きく採り上げられています。交通事故や医療過誤などの分野では、可愛がっていたペットが死んでしまった際の慰藉料が高額化してきており、裁判レベルでも“人並み”の扱いがなされているのではないかと指摘が出来ます。

 

例えば、犬のブリーダーがペットホテルに犬を委託したが死亡してしまったという事例では、犬の財産的価値80万円と慰謝料70万円の計150万円の賠償が認められていますし(千葉地裁平成17年2月28日判決)、交通事故の際に車に同乗していた犬に後遺障害が残った事例では、飼い主側に慰謝料80万円、総額で約180万円の損害賠償が認められました(名古屋地裁平成20年4月25日判決。但し、高裁で減額。)

 

社会的にも、連れ添ったペットを失った際の「ペットロス」は一つの精神疾患として認知されるに至っており、この意味で、最早ペットは単なる愛玩対象を超えた「伴侶」という地位を得ていると言うことが出来ます。こうした流れの中で、飼い主の死後のペットの安全を見守る「ペット信託」なるサービスを提唱しているNPO法人も出てきているほどです。

 

また、少子化の時代においては、子どものいない夫婦で子ども同然にペットを扱っていることも少なくありません。そうした場合には、自身の遺言の中にも、死後のペットの生活についての事項を盛り込むこともあるようです。こうした観点からは、夫婦の別れ際にペットのことをどう扱うかは、大きな問題となります。そこで以下では、婚姻生活中に、夫婦で可愛がっていたペットは、離婚する際にはどのような対応をすることになるのについて、少し見ていきたいと思います。

 

まず、ペットを子ども(未成年子)と同様に法的に扱うことが出来るでしょうか。子どもについては、離婚の際に「親権者」を決める必要があり、それに応じて「養育費」の支払いを請求することが出来ます。しかし、ある夫婦にとっては“子ども同然”という場合でも、ペットは法律上「物」と扱われてしまいます。そのため、「親権」や「養育費」といったことは問題となりません。つまり、ペットを引き取った方から他方へ、エサ代や通院費等々の請求をする法的な権利(養育費と同様な考え方に立てばペット自身の権利になるでしょうか)はないということです。

 

では、離婚に際してペットはどう扱われるでしょうか。原則的には、婚姻生活中に生じた財産の清算すなわち「財産分与」の中でその帰属を決めるということになります。ペットの所有権という権利を夫婦間でどうするか、という問題になるわけです。ペットを分割することは出来ませんし、共有とすることも難しいことから、一般的にはどちらかがペットを引取り、他方へ金銭等で清算をするということが多いかと思います。

 

一方、問題となるペットが夫婦どちらかの「特有財産」にあたる場合、例えば、婚姻前から飼っていた場合などには、そのペットは財産分与の対象とはならないので、飼い主を離婚にあたってどちらかに決めるということにはなりません。(元々の飼い主のものということです。)

 

なお、子どもの場合には、「面会交流」という問題もありますが、上記のとおりペットの場合には、このような権利(飼育していない者が一定の頻度でペットに会えること)は認められないということになってしまいます。

 

以上は基本的な考え方ですが、夫婦間で合意を交わせば、様々な対応をとることは可能です。例えば、離婚してもペットを共同で飼うこと、引取らない方がエサ代等を月々負担すること、などが考えられます。ただしこの場合、明確に合意事項を定めておかないと、後々支払などが実行されない事態になっても、対処が難しくなりますので、注意が必要です。

 

このように、まだまだ離婚の分野では、ペットに関して大きな動きはないように思われますが、今後、何らかの変化が生じてくる可能性もあるかもしれません。(上杉謙二郎)